岬の東端、海の見える高台にある神社がなんと言う名前だったのか、忘れてしまったけれど、御前崎の人々の大事なお宮でした。

             

お宮の掃除は婦人会の行事で、6人から10人のグループに分かれて、毎日行われています。

私たちの上岬10組は14軒なので半分にして7名で掃除に当たりました。

集合は朝5時30分。この時間を聞いたときには

「エッ!夕方じゃないの?」

と思わず聞き返したものです。

暗いうちに起き出して車に分乗し、お宮に向かいました。



うす暗い境内には早々とお参りしている人たちがいてびっくり。

漁に出ている夫や息子の無事を祈っているのでしょう、節くれだった手を合わせてじっと動かないおばあさん。

お百度参りなのか、本堂、脇や奥のお堂も全部回ってぐるぐる歩いている人もいます。

私たちもまずはお賽銭を上げてお参りしました。




物置においてある熊手を手にばらばらと分れててごみや落ち葉をはきあつめめます。

毎日のことですから、境内にはくまでの後がきれいに付いてあまりゴミはは落ちていません。

広い境内をはき終えたのは1時間ぐらいたってからでしょうか。

いつのまにか太陽はすっかり昇って、海の上はきらきらと輝いています。

すがすがしい気持ちでいっぱいになりました。



都心に住んでいると自分達の神様という意識はありません。

こうして家族の無事を祈り、祭りをして祝い、丁寧に掃除をする神社の存在はすばらしいと感じました。

お祭の賑やかさ、力の入れようは大変なもので、本祭は3年に1度に制限されているそうでした。私が暮らした2年はちょうど終わったばかりで、本祭を見そこないました。

が、それでも学校は休みだし、神社に向かう田んぼ道を盛装し、ハイヒールを履いた娘さんや、振袖姿の女の子が歩く姿に驚かされました。

はっぴを着てのお化粧がまたすごい。真白に塗りこんで、頬にはキラキラをつけ、額に赤くお稚児さん風にします。男の子は隈取をしたりもします。

神社の舞台での踊りにはおひねりがたくさん飛んでいました。




他にもいろいろ行事はあって、地の神様にはお正月に小さな社を庭の北のほうに造って、大根や臭みのある魚をまつります。

お庚申様の日には組のものが集まって、食事をします。

このとき、ひとつのちゃわんのお酒を回していただくと聞きました。

この日のために座布団や食器をそろえるのが大変なことです。

お庚申さまはやきもち焼きなので夫婦の営みをしちゃいけないという話は、皆さんが教えてくださいました。



節分には豆を道の辻にそっと置いてきます。人に見つからないように置くんです。

又恵比須講の日には商店で安売りがありました。

どれもはじめて聞く、めずらしい慣わしでした。